<教員の働き方改革>NHKでも猛烈批判「変形労働時間制」

働き方改革

文部科学省が教員の働き方改革の目玉として導入を検討している「変形労働時間制」。長時間勤務が原因の過労死など、その過度な勤務時間が問題視される中、文科省が導入しようとしているこの制度に「待った」を訴える声がSNSを中心に聞かれます。

 

変形労働時間制とは

そもそも、変形労働時間制とは、

変形労働時間制(へんけいろうどうじかんせい)とは、労働基準法に規定された、労働時間の運用を弾力的に行う制度のことである。

(Wikipediaより)

とある通り、繁忙期など、残業が多くなる時期の勤務時間を数時間延ばし、閑散期など比較的余裕のある時期の勤務時間を、延ばした分だけ短縮して相殺するという制度です。

 

デパートなど、客足が比較的予測しやすい業界で導入されている制度で、学校現場では、夏休みのように他の時期に比べて余裕のある時期にまとまった休みが取れるようにするなどして、学期中の勤務時間を最大で10時間程度に延ばすことが検討されています。

 

以下は、文部科学省が提示している「1年単位の変形労働時間制の要件」からの抜粋です。

(参考資料4)1年単位の変形労働時間制について:文部科学省

 

私立中学などでは既に導入例も

東京都内の私立中学校や高等学校などでは、この「変形労働制」が既に導入されている例もあります。

 

中央教育審議会 初等中等教育分科会 教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第10、11回)議事録・配付資料 [資料3−3]−文部科学省

 

 

文科省の上記ページによれば、

夏期休業中の勤務時間を5時間とするかわりに、通常期の勤務時間を8時〜18時の10時間とする、また、夏期休暇を11日とすることで「うまくいっている」と評価しているようです。

 

さらに、この制度の導入において、「教員からの不満はない」としており、あたかも現実に導入が可能であるような表現になっています。

 

NHK番組で問題提議

11月29日、NHKの朝の番組「おはよう日本」内のコーナー「けさのクローズアップ」で、教員の働き方改革についての特集が放送され、twitterでは多くの反響がありました。

教員の働き方改革 先生の負担は減らせるか|けさのクローズアップ|NHK おはよう日本
 

 

 

この図を見る限り、定時を繰り上げたとしても業務内容が抜本的に改善される訳ではないため労働時間の削減にはつながらず、結局働き方改革には直結しない制度であることが分かります。

 

さらに、勤務時間が朝は30分程度、夕方は1時間程度延長されるため、子育て世代の教員は保育園の送り迎えが厳しくなり、介護の必要のある教員はこれまで通りの生活が脅かされるなどの問題が懸念されています。

 

教員の約6割が変形労働時間制は介護や子育て中の教員は困る、連合調べ
日本労働組合総連合会は「教員の勤務時間に関するアンケート」を行い、18日その結果を発表した。 それによると、公立学校教員の1週間の学校内労働時間は、勤務日は平均52.5時間、週休日

 

世間の最大の誤解

一方、教員の給与体系を知らない世間の人々に大きな誤解を与えるといった問題点もあります。

 

 

 

教職員は、特給法という特殊な法律のもと定められた給与体系のため、給与の4%を残業等の手当として支給される(教員調整額)代わりに、どれだけ残業をしようとも残業代が支払われません。よって、変形労働時間制が適用されたとしても、トータルの勤務時間は全く変わらないばかりか、これまで、工夫して時短に努め定時退勤を目指してきた教員も、これまで以上に働かなければならないという事態にもなりかねないのです。

 

「変形労働時間制」は小手先だけ

これまで述べてきた通り、「変形労働時間制」は小手先だけの制度であって、本質的な働き方改革にはなり得ないように思われます。

 

教員の働き方改革の本丸は、

  • 業務内容の抜本的な削減
  • 教員の増員

この2つにほかなりません。

 

時間外勤務が過労死ラインである80時間を超える教員の数が、小学校で34%、中学校で6割近いという現状を重く受け止める必要があります。

過労死ライン超えの教員、公立校で半数 仕事持ち帰りも:朝日新聞デジタル
 連合は18日、公立学校教員を対象に緊急調査を実施した結果、半数が過労死ラインとされる週60時間以上の勤務を超えていたと発表した。「時間内に仕事が処理しきれないか」という質問には8割以上が「とてもそう…

 

さらに、病気休職者は平成28年度で4891人、潜在的な精神疾患を抱える教員も数多くいると推測されています。その上、教員採用試験の志望倍率は年々低下し、それによる教職員の質の低下が懸念されています。現に、平成28年度の懲戒処分(訓告含む)は8,038人、この数は増加傾向にあります。さらに、教員免許更新制度による副産物として、毎年100名程度の教師が免許を失効しているというデータもあります。

 

教員免許、毎年100人前後が失効という現実|ベネッセ教育情報サイト
【ベネッセ|教育】文部科学省は、2013(平成25)年3月末に教員免許の最終更新期間が来た教員の、免許更新状況をまとめた。

 

この年末年始、動向を注視

今月6日、中教審で行われる「学校における働き方改革特別部会」が一つの大きなポイントになりそうです。

 

学校における働き方改革特別部会(第20回)の開催について:文部科学省

 

この中で、「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」が提案される予定で、どのような内容が盛り込まれるかが最大のポイントとなりそうです。

 

教師の働き方改革は、日本の子どもたちの教育水準の担保、さらには社会の先行投資ともいえる、大きな転換点であることはまちがいありません。その動向に今後も注視していく必要があります。

コメント