たった一つの些細な工夫で児童を劇的に変えた話に関する考察

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先日見かけた記事がこちら。

ざっくりと要約すると、

10年前担任した少し変わった子が、ある工夫を施すことで学年トップになった。
今トップクラスの大学へ進み最先端の研究をしている。

といった感じです。

おそらくこの子はアスペルガーorADHD

おそらく、この子は環境の刺激に敏感な性質を持つ子だったんだろうなと思う訳です。

つまり、ADHDか、もしくはこだわりの強いアスペルガー症候群の可能性もあります。

アスペルガー症候群と高機能自閉症の特徴と対応
アスペルガー症候群とは アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラム障害の一つで、コミュニケーションや他者の気持ちを推し量ったりすることに困難が...

今、何らかの障害を持つ子どもがクラスに在籍する割合は、2012年(少し古いデータですが)で6.5パーセント。つまり、30人学級で2人弱が在籍するということになります。

学校現場で今スタンダードになりつつある

この記事によれば、これが10年前のことだということですから、今と状況はかなり違うのではと推測されます。

その中で、障害を抱えた子どもに分かりやすい授業を行い、その子の特性を生かしてやる気を引き出したという実績はとてもすばらしいことです。

しかし、こういった支援の方法はここ数年ではかなりスタンダードになりつつあります。ユニバーサルデザインという考え方です。教育界でおそらく知らない方はいないのではないかというくらいメジャーです。

ざっくり言うと、

支援を要する(障害を抱えた)子どもも、そうでない子どもも、どちらの子どもたちにとっても分かりやすく楽しく学習ができるような手立てや配慮を行う

ということです。

学校教育のユニバーサルデザイン化
学校の教室では、さまざまな個性をもった子どもたちが同じ空間で学習を共にします。文部科学省の平成23年の調べによれば、何らかの発達障がい(LD...

記事の事例を振り返る

この記事での事例を振り返ってみます。

注目するのはここです。

一日の予定を示し授業の流れを示し

これも、ユニバーサルデザインでは基本のキです。

授業のユニバーサルデザイン
授業のユニバーサルデザイン 発達障がいをかかえた子どもたちにとっても分かりやすく、楽しい授業を行うための授業改善は、学校教育のユニバー...

授業の最初に、この1時間がどのような流れで行われるかの全体を明確にしておくことで、見通しがもてず不安になってしまう子どもに安心感を与えることができます。

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さらに、この部分です。

「今はここの話だよ」と他の部分を紙で隠してやった

これは、焦点化という手法です。

教科書を音読するとき、どの行を読んでいるか分からなくなってしまう子が結構います。そんなとき、教科書の1行だけが見えるよう、真っ白な紙に1行分だけ穴をあけたものを教科書の上にのせて読んでいくという支援方法があります。

さらに、

これは、場の構造化とよばれる手法です。

教室環境のユニバーサルデザイン
教室環境のユニバーサルデザイン 発達障がいをかかえた子どもたちは、状況依存性という特徴があり、その子をとりまく環境に大きく影響を受けま...

授業のときには、掲示物に目隠しを。
教室前面の掲示板は、授業に必要のない時にはカーテンで目隠しをすると刺激をぐっと減らすことができます。

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教室の前面は、極力すっきりとさせる。
黒板周辺は、一番視野に入りやすいです。黒板まわりをすっきりさせることで、刺激量を抑えることができます。

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それで、結局何が大切か

現場では、支援が必要な子どもたちに様々な方法で配慮しています。ただ大声でしかったり、廊下に立たせるような方法は、もはや学校で見かけることはほぼありません。

いろいろな特性を持った子どもたち、そして、厳しい家庭環境に置かれた子どもたちが、教室で今日も困っています。

騒いで、授業妨害をして、教室を飛び出して…

教師を困らせている、と思われている子どもたち自身が、じつは困っています

こういう記事を読むと、些細な一つの方法で解決できそうなミスリードをもたらします。

結果を見ると、些細な一つの工夫で子どもの困難を克服させた風に見えますが、そこに至るまでに数々の試行錯誤失敗観察児童理解があったはずなのです。

その子の特性に合わせて、何が適切なのか、どのような支援が必要なのか、毎日ぐちゃぐちゃになりながら悩み、時には格闘し、時には教師の無能さを痛感し、それでもあきらめずに次の手を考えて支援をし続けることが大切なのではないでしょうか。その百の手、千の手のうちのたった一つが本当に幸運にもぴったりくることが時折あるのです。そう、10年に1度くらいの割で。

教師も子どもも格闘です。戦っています。でも、お互いは敵同士ではありません同じ敵に向かって戦う、ある種仲間です。敵は、障壁であり、その子が抱える課題であり、たった一つの些細な工夫を見つけるための戦いです。

そんなことが大切なのではないかなと思います。

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