学校教育のユニバーサルデザイン化

学校の教室では、さまざまな個性をもった子どもたちが同じ空間で学習を共にします。文部科学省の平成23年の調べによれば、何らかの発達障がい(LD、ADHD、高機能自閉症など)をかかえた子どもたちが全体の6.5パーセントの割合でクラスに在籍しています。これは、30人のクラスで約2人という計算になります。

もちろん、このような子どもたちの他にも、学習のスピードがゆっくりな子、集中が長く続けにくい子、ぼーっとしがちな子、さまざまな刺激に敏感な子など、発達障がいの診断を受けていなくても教師にとって『気になる子』も、きっとクラスにいるのではないかと思います。

学校での授業は、このような様々な個性をもつ児童にとっても分かりやすく、参加しやすいものになっているでしょうか。むしろ、『気になる子』が、『困った子』『授業進行を妨げる子』のような評価をされてはいないでしょうか。

ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインとは、文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障がい・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(デザイン)のことを言います。(Wikipediaより引用)

ユニバーサルデザインの7原則

(The Center for Universal Design, NC State University による。)

1.どんな人でも公平に使えること(公平な利用)

Equitable use

2.使う上での柔軟性があること(利用における柔軟性)   Flexibility in use

3.使い方が簡単で自明であること(単純で直感的な利用)   Simple and intuitive

4.必要な情報がすぐに分かること(認知できる情報)   Perceptible information

5.うっかりミスを許容できること(失敗に対する寛大さ)   Tolerance for error

6.身体への過度な負担を必要としないこと(少ない身体的な努力)   Low physical effort

7.アクセスや利用のための十分な大きさと空間が確保されてること

(接近や利用のためのサイズと空間)  Size and space for approach and use

2.使う上での柔軟性があること(利用における柔軟性)
受け皿の広いコイン投入口

3.使い方が簡単で自明であること
(単純で直感的な利用)
シャンプーとリンスの判別用凹凸

ユニバーサルデザインの大きなポイントは、対象が障がい者を含む高齢者などの社会的弱者である『バリアフリー』とは違い、『できるだけ多くの人が利用可能であるようなデザイン』にすることです。

障がいなどをもつ社会的弱者の人々とって使いやすいデザイン

他のすべての人々にとっても使いやすいデザイン

学校教育のユニバーサルデザイン化

ユニバーサルデザインの視点に立って、学校教育にその考えを取り入れていこうという取り組みが始まっています。

東京都日野市の公立小中学校と共に、学校教育のユニバーサルデザインを研究している、明星大学の小貫悟先生によると、

発達障がいのある子とって

参加しやすい学校、わかりやすい授業

他のすべての子にとっても

参加しやすい学校、わかりやすい授業

である、という観点に立って、発達障がいのある子どもたちを包み込む「インクルージブ教育」の実現を目指した授業改革を実践されています。

ポイントは、あくまでユニバーサルデザイン的な立場であり、バリアフリーではないということ。

つまり、発達障がいの子どもたちのために特化された授業(難易度を下げる、別課題をあたえる、個別授業や取り出し授業で補填するなど)を行うのではなく、発達障がいのある子どもも、学習能力の高い子どもも、両者にとって分かりやすく楽しい授業をおこなうことが、授業のユニバーサルデザイン化であるということです。

※バリアフリー的な個別配慮を行わないのではなく、ユニバーサルデザイン化された授業では行わないということです。詳しくは後述します。

子どもの特徴を知りましょう

発達障がいをかかえた子どもたちに共通して言える特徴の一つが、

状況依存性

です。

学習障がい(LD)を持つ子どもは、学習の仕方という状況に左右されます。例えば、聴覚による学習が苦手なこどもに「よく聞きなさい」という指示は適切ではありません。視覚的な指示を心がけたり、目で見て分かる教材を取り入れたりすることが必要です。

注意欠陥・多動性障がい(ADHD)の子どもは、刺激量に大きく左右されます。まわりの子どもたちの声などの聴覚刺激、掲示物や板書などの視覚刺激など、注意欠陥や多動を引き起こす増悪因子が刺激となっています。

高機能自閉症の子どもたちは、焦点が1点に集中してしまったり、物事を整理して考えることが苦手です。また、コミュニケーションを上手にとることができないこともあるので、あいまいな指示や多くの情報を一度に伝えると、パニックに陥ったり、理解できなかったりすることがあります。

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コメント

  1. 三島 修治 より:

    始めまして。島根大学教育学部で勤務している実務家教員です。この学校教育のユニバーサルデザイン化、授業のユニバーサルデザインのシリーズの内容が大変素晴らしく思いました。つきましては、学生や現場教員の研修会で、この内容や写真をパワーポイントシート及びその印刷配布物として出典を明記して使用を許可いただきたくお願いを申し上げる次第です。ご高配を賜りますようお願いいたします。