小学校で英語が教科化。2020年までに何ができるのか。

現在も「外国語活動」として必修となっている小学校英語。
2013年12月、下村博文文科相大臣が記者会見を行い、早ければ東京五輪の開催される2020年度に小学校英語を教科として実施する事を明らかにしました。

教科として英語教育を行うのは、小学校3年生から6年生。
これから2020年に向けた8年間。この8年の間に、日本は何ができるのでしょうか。
そして、何をすべきなのでしょうか。

2020年東京五輪を目指す英語改革

義務教育(小学校5、6年)での英語活動の教科化についての報道を以下に抜粋します。

中学英語の授業は英語、小学5、6年は教科化 7年後から

 文部科学省は13日、中学校の英語の授業を、原則として英語で行うことを決めた。本年度から英語で授業をしている高校に続き、平成32年度からの実施を目指す。正式な教科でない「外国語活動」として実施している小学校は開始時期を小学5年から小学3年に前倒しし、5、6年は教科に格上げする。

 来年1月に設置する有識者会議で詳細を検討し、学習指導要領の改定を経て、小学3、4年の外国語活動は30年度から先行実施する方針。

 下村博文文科相は同日の記者会見で「東京五輪を見据え、受験英語ではなく、外国人とコミュニケーションするための英語教育に転換させていく」と述べた。今後は、教員の確保や指導力向上が課題となりそうだ。

(産経ニュース 2013.12.13)

また、文科省『グローバル化に対応した英語教育改革実施計画』によれば、

2020年(平成32年)の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、新たな英語教育が本格展開できるように、本計画に基づき体制 整備等を含め2014年度から逐次改革を推進する。
小学校中学年:活動型
・週1〜2コマ程度
・コミュニケーション能力の素地を養う
・学級担任を中心に指導

小学校高学年:教科型
・週3コマ程度 (「モジュール授業」も活用)
・初歩的な英語の運用能力を養う
・英語指導力を備えた学級担任に加えて専科教員の積極的活用

とあります。2020年の五輪を意識した国際力・コミュニケーション力の向上を前面に押し出していると言えます。

現在の『外国語活動』の指導要領は。

現在も必修として行われている、小学校5、6年生の外国語活動の指導要領では、外国語(英語)をどのように指導し、どのような力を育てることを狙っているのでしょうか。
小学校学習指導要領『第4章 外国語活動』より)

目標

外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う。

内容

外国語を用いて積極的にコミュニケーションを図ることができるよう,次の事項について指導する。
(1) 外国語を用いてコミュニケーションを図る楽しさを体験すること。
(2) 積極的に外国語を聞いたり,話したりすること。
(3) 言語を用いてコミュニケーションを図ることの大切さを知ること。

日本と外国の言語や文化について,体験的に理解を深めることができるよう,次の事項について指導する。
(1) 外国語の音声やリズムなどに慣れ親しむとともに,日本語との違いを知り,言葉の面白さや豊かさに気付くこと。
(2) 日本と外国との生活,習慣,行事などの違いを知り,多様なものの見方や考え方があることに気付くこと。
(3) 異なる文化をもつ人々との交流等を体験し,文化等に対する理解を深めること。

また、第7次教育課程では、小学校英語の目標を以下のように定めています。
中教審『外国語の教育目標・内容と指導方法』より)

↑画像をクリックすると拡大します。





このように、小学校英語が求める目標は思ったより高度である事が分かります。例えば、3学年では「正確なアクセント、リズム、イントネーションで話す」、4学年では「アルファベットの大文字小文字が認識できる」、5、6学年になると「過去や未来の事について質問したり、答えたりできる」「基本的な電話での会話が行える」など、中学生でも戸惑ってしまうような内容の理解を小学生に期待しています。

英語教育の目標に迫るための課題

新たな英語教育をスタートさせようとしていますが、現状多くの課題が山積しています。



英語を教える先生が、そもそも英語を話せない

基本的には、小学校英語を教えるのは学級担任であるとしています。高学年(5、6年)は、「英語指導力を備えた学級担任と専科教員」となっています。

前述した通り、英語教育の中学年の目標には「正確な発音やアクセントで話す」という項目があります。しかし、当の学級担任に正確な発音で流暢に英語を話すスキルが備わっていなければ、子どもたちに教えようもありません。教師は教える「プロ」であるべきであり、そうなければなりません。きちんと教えるスキルがないのに、素人同然の教師が英語を教えるのでは本末転倒です。



英語は言語。言語習得の原点は『聞く』こと

赤ちゃんが言語を習得する過程を見てみると、母親の呼びかけに反応し、自分の欲求を伝えるために喃語(ママ、バー、など)を話だし、文法を学ぶ事なしに言葉を理解していきます。言語(母語として)習得は7、8歳ぐらいまでに行われ、そこから少しずつ習得能力は減退し、17歳ぐらいが限界だとされています。小学校の段階で外国語を学ぶ事の最大の利点はここにあるのではないかと思います。

しかし、現状の中学英語では、教科書を読み、文法や単語を覚え、英文を正しく書く、といった、目や手を使った学習が主流です。コミュニケーションを主体にした授業は、立案が難しい上、評価もしにくいという理由から、記述式の授業やテストで評価を行うことが多いのです。さらには、集団授業には、そもそもの限界があります。どんなにネイティブのALTが授業を行っても、限られた授業時間の中で十分にコミュニケーションを取ることは難しいでしょう。

小学校での英語教育を考える時、このような中学英語での課題にきちんと向き合い、思い切った指導方法の変革を行う必要があると思います。



授業時数をどう捻出するか

同時期には道徳の教科化も控えています。学習内容もゆとり路線からの脱却を受けて増大し、学校の教育活動はもはやパンク寸前です。その中で、どのように授業時数を確保するのかについても検討する必要があります。

文科省の計画には、モジュール授業を用いた時間割の例なども紹介されていますが、専科教員やALTの配当なども考慮すると、同時間に複数の学級で英語を実施するのには無理が生じる可能性もあります。また、高学年は正式教科となり評価・評定が必要になり、教師の多忙感が一層高まる心配もあります。

2020年までに何ができるのか


人材確保が何より必要

何より、英語教育のスペシャリストの確保を今から行う事が必要です。近年では、ALTの中にネイティブではない方が教壇に立つ事も珍しくありません。もちろん、世界には英語を話す国がたくさんあり、イギリス英語、オーストラリア英語、香港英語、インド英語など多種多様です。しかし、小学生に基礎的・基本的な英語を学ばせる時には、やはり標準英語(アメリカ、もしくはイギリス英語)を話すALTを採用すべきだと考えています。小学1年生にひらがなを教える時に、隷書や草書ではなく、楷書体(教科書体)で教えるのと同様です。

また、帰国子女の方など、英語を自由に操る事の出来る日本人教師を各小学校に配置するのが理想です。英語をネイティブ並に話すことができなければ、正確な発音、イントネーションを教える事は不可能だからです。乱暴な言い方をすれば、既存の「英語が話せない先生」たちに英語研修を行い、授業力向上を図ろうとする事は無意味だと思います。ただ教師の負担だけを闇雲に増やすだけ、という事態になりかねません。

国を挙げて人材発掘を行い、教員免許についての規制緩和等を行うなどしていくことも場合によっては必要かもしれません。



学級規模縮小(少人数化)の実施

前述の通り、コミュニケーションの基本は1対1であるべきです。特に、言語習得に関しては尚更です。『話す』『聞く』に重点をおき、本当に『話せる』『使える』日本人を養うのであれば、英語授業に関しては大幅な少人数化を行う必要があると思います。

これには様々な問題が絡んできますが、この点を無視して形だけの英語教育を行っても、子どもたちの英語の力が養われないばかりか、学力格差の波に飲まれた「できない」子どもたちの意欲を削ぐだけの結果になってしまいかねません。



指導教材の革命を

指導教材は非常に重要です。教科書主導の授業にしてしまっては、中学英語の二の舞になってしまいます。しかし、一定の基準がなければ、授業の水準に大きなばらつきが出てしまいます。

これまでの日本の教育のよさを踏襲しながら、諸外国の例なども参考にし、まったく新しい指導教材の開発を行う必要があります。言語習得は、知識や理解を目的とするのではなく、「伝える」ための手段であり、他教科とは大きく区別されなければならないと思うからです。

2020年まであと8年。限られた8年間の中で理想となる英語教育の実現に一歩でも近づけるよう、国を挙げて取り組んでもらえることを期待しています。

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