文科省道徳教育用教材『私たちの道徳』を眺めた感想

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文部科学省が2月14日、道徳教育用教材『心のノート』を全面改訂し、『私たちの道徳』を公表しました。平成26年度からの使用ができるよう、全国の小・中学校に配布されるとのことです。

今回の『私たちの道徳』は、低(小学校1、2年生)、中(小学校3、4年生)、高(小学校5、6年生)向けの3種類に、中学生向けを合わせた計4種類で、作成費は9億8000万円。

時代を反映した「いじめ問題」や「情報モラル」に関するテーマが盛り込まれたり、『心のノート』ではなかった読み物教材も多く取り入れたりされ、ページ数も増加した今回の改訂。今回は、その一部を紹介しようと思います。

低学年(小学校1、2年生)

低学年(小学校1、2年生)向けの『わたしたちの道徳』の目次を見てみると、非常に読み物教材が多いことが分かります。これは、他学年むけのものについても同様で、これまでの『心のノート』が非常に使いづらく、実際の教育現場で活用されていなかった実情を反映しているものと考えられます。

学校教育の現場のみならず、家庭や地域でも活用できることを想定した使い方を提案しています。書き込み欄も多く、意見を書いたり、記録したりする中で『自分の生き方に生かす』ことをねらっています。

実際のページの一例。

実際に自分の生活を振り返り、記録をすることができる装丁になっています。さらに、家の人からコメントをもらう欄もあり、家庭でも活用されることが期待されている事が分かります。

今回の改訂での大きな目玉の一つが、国内外の偉人たちの業績や名言を多く紹介していることです。

このページでは、シラーの名言を紹介し、友情や友だちへの思いやりについて取り上げています。

中学年(小学校3、4年生)

中学年では、さらにページ数も増加し、200ページ弱の充実した内容になっています。やはり読み物教材が多く盛り込まれ、これ1冊でも道徳の授業が行えるような配慮が伺えます。

身近な人々の活躍と、生活の中での工夫をテーマにした一ページ。

最後には、地域や家庭で実際に生活をする人の工夫をインタビューし記録する欄があります。

なでしこジャパンの澤穂希選手のコラムを掲載し、最後までやり抜くことの大切さや目標を持って生活することの良さを取り上げたページ。

実際に目標を書く欄と、がんばり日記もついており、同じページを何度も見返すことで自分の成長の足跡が振り返ることができるようになっています。

愛国心にもつながる『郷土愛』についてのページ。

じぶんのふるさとへの気持ちを書きこむ欄もあります。

今回の改訂の特徴ともいえる、情報モラルについてのページが小学校中学年向けに掲載されています。

ベネッセの調査(2012年)によれば、携帯電話の所有率は小学3年生で14%、小学4年生で20.2%と、5、6人に1人の割合で携帯電話を所有しているという実態が分かります。
また、近年横行しているフィッシング詐欺につながる迷惑メールの例も挙げて、子どもたち自身が情報社会での注意点を学ぶことができるようになっています。

高学年(小学校5、6年生)

高学年むけのものになると内容はさらに多くなり、図やグラフから日本の同学年の子どもたちの様子を読み取ったり、ワンガリ・マータイやマザー・テレサ、ピエール・ド・クーベルタンなどの海外の偉人や、内村航平や森光子、向井千秋などの国内の有名人などの功績を紹介したりしています。

グラフなどを多用して、データから思ったことや考えたことを記述するような構成になっています。国語や社会、算数でも子どもたちに身につけさせたい力として挙げられている『読解力』にもつながっているように感じます。

アメリカのメジャーリーグで活躍するイチロー選手を題材にした教材文。

このように、実際に活躍する有名人や、歴史上の偉人などを紹介する教材が多いのも今回の改訂の特徴です。

江戸しぐさを例に、日本人の美徳や日本人らしさを喚起する内容になっています。

核家族が主流になった現代ではなかなか家庭から学ぶことが難しくなってしまっている日本人らしい所作や作法などを、子どもたちに伝えようとする意図がみえます。

最近のニュースを見ると、世間を不安にさせる事件や犯罪はもちろん、政治家までもが子どもたちの手本とは到底言えない大人たちとして子どもの目に映る場面が少なくありません。

当たり前のことを当たり前のものとして伝えていく必要があるのではないでしょうか。

今、大きな社会問題として考えなければならない「いじめ」の問題。

作曲家の千住明のメッセージを取り上げて、単に「いじめをしてはならない」という教訓で終始するのではなく、どうしていじめをしてしまうのか、ごく一般的な、良心をもつ子どもがいじめに加担してしまう危険性について訴える内容になっています。

日本の伝統や、技術などを紹介するページ。

日本の文化について知り、愛国心を養おうという意図が感じられます。

高学年むけになると、さらに詳しく情報モラルについてのページが割り当てられています。

個人情報についてや、オンラインゲーム、ネット犯罪、さらにはメールで相手に真意を伝えることの難しさなど、かなり実情に即した注意喚起をしているという印象を受けます。

今回の改訂に思うこと

実際の中身を見て、非常に内容の充実していて、現場で使いやすそうだなと言う印象を持ちました。読み物教材においては、実際に副読本で多く採用されているものも収録されており、学校で採用している副読本の代わりに『私たちの道徳』で道徳の授業ができるのではないかと思うほど改善されていると感じました。

しかし、どうしても『教え込み』の要素を所々で感じてしまい、正解を言わなければ成立しない「タテマエ」の道徳に向かってしまうと言う危険性も含んでいるのではないかと思います。また、全体的に『教訓』や『生活改善』といったテーマが多く、仲間作り(エンカウンター)や、学級作りなどの要素が若干少ないかな、とも感じました。

活用の仕方によっては、とても有効な教材になるのではないかと期待しています。実際に学校に配布され、次年度以降に活用されてからの多くの方の批評も聞いてみたいと思います。

道徳教育用教材「私たちの道徳」について/文部科学省ホームページ

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